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WWW

 WWWは「ページ」と「リンク」を基本とする情報発信システムである。WWWは平たく言うと電子紙芝居である。普通の紙芝居は一方向に流れるだけだが、WWWは読者の興味のままに多方向に行ったり来たりできる点が異なる。これは何かに似ているぞ・・・と思ったら、アドベンチャー・ゲームに似ていることに気がついた。確かに、WWWで情報を見ていく(ブラウズする、という)のは、アドベンチャーゲームに似たワクワク感がある。
 WWWはWorld Wide Webの略である。WWW自体の読みは、ダブリュダブリュダブリュとか、トリプルダブリュとか、単にウェブと読んだりとか、様々である。

 WWWは、インターネット上でもっとも人気のあるアプリケーションであるが、なぜWWWがこれほどの人気を得たかを考えるには、WWWの類似システムであるGopherとの比較をしてみると分かりやすい。  Gopherは、WWWと目的はほぼ同じ、つまり情報発信のシステムであるが、ユーザーインターフェースがWWWとは大幅に異なり、メニュー形式をとる。

Gopherによる情報発信の例:

 ドイツ初期バロック音楽の「3S」と呼ばれる音楽家がいた。以下の3人である。

  1.シュッツ
  2.シャイン
  3.シャイト

 詳しい説明を見たい方は、対応する数字を入力してください:


WWWの例:

 ドイツ初期バロック音楽の「3S」と呼ばれる偉大な3人の音楽家がいた。すなわち、シュッツシャインシャイトである。なかでもシュッツは、当時音楽後進国だったドイツを一挙に一流国の水準に引き上げ、またドイツ語のイントネーションを音楽のリズムの推進力に活かす工夫を発明した。この二点により、シュッツは「ドイツ音楽の父」と呼ぶにふさわしい音楽家である。

 下線を引いた部分が「リンク」である。リンクをマウスでクリックするだけで、その詳しい説明を見ることができる。一例として、シュッツの部分をクリックすると、以下のような説明が現れることだろう。

 シュッツドイツ初期バロックのもっとも偉大な音楽家である。彼は、当初法律家を志したが、イタリア留学を機に音楽に転向した。イタリアでは、ヴェネツィアの音楽監督だったガブリエリに師事し、当時の最先端の形式である複合唱の手法を学んだ。また、カブリエリの後輩で、当時最高の音楽家モンテヴェルディからも学ぶことができた。【中略】シュッツはオランダに旅行したことがあり、そこで当代きっての画家レンブラントに会ったと推測されている。レンブラントの描いた「ある音楽家の肖像」のモデルはシュッツであり、この時の二人の邂逅の産物であると考えられている。

 GopherとWWWの違いは明らかだろう。Gopherがいかにもプログラム然としたインターフェースを持ち、記述の柔軟性の乏しいのに対して、WWWは自然な文章であり、柔軟性も高い。上記の例では、ドイツの初期バロックの音楽家を足掛かりとして、同時代のイタリアの音楽家やオランダの画家についても知識を得ることができる。リンク先は世界中のWWWサイト(サーバーと考えてよい)であってよいし、テキストだけでなく、静止画像や音声、動画などのマルチメディアであってもよい[*1]

 上記のように「リンク」により情報間をネット状につないだデータ構造を「ハイパーテキスト」と呼ぶ。WWWはハイパーテキストの最も普及した実例である。  WWWは、情報の記述にHTML、データ転送プロトコルとしてHTTPを用いる。ともに極めてシンプルな仕様である。また、WWWを見るための専用プログラムをWWWブラウザという。著名なWWWブラウザとしては、Netscape NavigatorやMS Internet Explorerなどがある。

 その昔、世界中の情報を統一的に、居ながらにしてアクセスすることのできる壮大なプロジェクトとして「ザナドゥ・プロジェクト」があった。しかし、インターネットとWWWの普及により、ザナドゥの目指していた夢が、仕組みとしてもコンテンツとしてもあっさり実現されてしまったのは皮肉な結末であった。  えーっと、ザナドゥの提唱者は何という人だっけな。スポンサーは転々とした結果、Autodeskになったと聞くが、今はどこかな。結局ザナドゥはどうなったんだ・・・などという疑問は、いうまでもなく、WWWにより調べるのがもっとも早い。


[*1] 上記の例では、「ある音楽家の肖像」のリンクをたどることにより、この絵を画像として参照できるだろう。

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